シリーズ  知多四国八十八ヵ所霊場 戻る

〜24.07.14掲載〜
●風光明媚で温暖な地 〈シリーズ第5回〉 半島南端11カ寺を巡る

「知多四国八十八カ所霊場」の札所は一番から八十八番までのお寺と、開山所3カ寺、番外7カ寺を合わせて98カ寺あります。各寺院は八宗十一派という宗派の違いを超え弘法大師(空海)への信仰という縁で結び合っています。シリーズ5回目の今回は、半島南端にある第三十番医王寺から第三十九番医徳院までと番外の西方寺の合計11カ寺。大井漁港から南方の海岸近くの岩礁には、知多四国の象徴、上陸大師像が建っています。弘法大師が41歳の時、三河から舟で初めて降り立った地です。この像が建立されたのは弘法大師1150年大遠忌の昭和59年。身の丈3.5b。礼拝所、展望台もあります。知多は三方を風光明媚な海に囲まれた温暖な地で、弘法大師は故郷、四国の地にあまりに似ているのに驚いたと伝えられています。
第三十番 宝珠山 医王寺(いおうじ)
知多郡南知多町大井真向38 【宗派】真言宗豊山派 【本尊】薬師如来
大井漁港の近くに密集する5カ寺のうちのひとつ。神亀2(725)年、行基が現在地の西方にある「仏山」に草庵を結び、薬師如来を安置した。弘仁5(814)年には、知多半島に舟で上陸した弘法大師が当寺で護摩修法を営み、開山したとされる。建暦2(1212)年、現在地に再建。七堂伽藍十二坊を擁する大寺院の中心だった。
第三十一番 宝珠山 利生院(りしょういん)
知多郡南知多町大井真向27 【宗派】真言宗豊山派 【本尊】不動明王
通称「赤門寺」。立派な赤門をくぐり、細長い路を進むと弘法大師が祭られてある大師堂がある。本堂は昭和57年に再建され、毎年1月28日の初不動には息災護摩供が厳修されている。
第三十二番 宝珠山 宝乗院(ほうじょういん)
知多郡南知多町大井真向34 【宗派】真言宗豊山派 【本尊】十一面観世音菩薩
利生院と道を挟んで向かい合って建っている。山門をくぐると、一直線に本堂(大師堂)がある。別堂には金毘羅大権現が祭られており「金比羅さん」として親しまれている。海上安全の守り神で、漁業関係者から厚い信仰を集めている。
第三十三番 宝珠山 北室院(きたむろいん)
知多郡南知多町大井真向11 【宗派】真言宗豊山派 【本尊】聖観世音菩薩
仁王像が祭られている山門をくぐると、正面に本堂があるほか、境内には宝形造りの三十三観音堂、十王堂、仏手石堂などがある。弘法大師ゆかりの「明星井」は今も湧き出ている。当院は「上陸大師」の納経所になっている。
第三十四番 宝珠山 性慶院(しょうけいいん)
知多郡南知多町大井丘の下1 【宗派】真言宗豊山派 【本尊】青面金剛
大井の殿様、尾張藩高木家の墓所である。本堂左手には福寿稲荷大明神が祭られ、堂の前には左右3体ずつの「おきつねさん」が鎮座している。賭け事にご利益があるといわれている。
第三十五番 神光山 成願寺(じょうがんじ)
知多郡南知多町片名稗田9 【宗派】曹洞宗 【本尊】阿弥陀如来
大井の南にある片名地区は、弘仁5(814)年に弘法大師が知多半島へ上陸した際、悪病がはやっていた。大師が厄除けの法を修行したところ、村人は救われた。その後、悪病除け、災難除けで霊験あらたかな「厄除修行大師像」をお祭りした。 本堂の一隅には円空が雨乞いのために彫ったとされる「善女竜王像」が安置されている。
第三十六番 天永山 遍照寺(へんじょうじ)
知多郡南知多町師崎栄村15 【宗派】真言宗豊山派 【本尊】弁財天
知多半島最南端、港町師崎にある札所。弁財天を本尊に祭るのは、知多四国霊場で唯一。全国的にも珍しい。境内には琵琶を抱えた等身大の弁財天銅像とともに、弘法大師と如意輪観音が祭られている。別堂の「御手引大師」は参拝者の安全を加護するという。
第三十七番 魚養山 大光院(だいこういん )
知多郡南知多町日間賀島小戸地59 【宗派】真言宗豊山派 【本尊】大日如来
日間賀島には東西2つの集落のうち、東にある。神亀2(725)年、医王寺十二坊の一坊として建てられたが、医王寺が火災で焼失後の建暦2(1212)年、日間賀島に再建された。別堂の「金毘羅大権現」は海上安全の守護神。
第三十八番 龍門山 正法禅寺(しょうぼうぜんじ)
知多郡南知多町篠島神戸219 【宗派】曹洞宗 【本尊】釈迦牟尼仏
貞治元(1362)年開創。開山の仙麟和尚は駿府で今川義元の人質になっていた松平竹千代(後の徳川家康)を助け、びくに隠して島へ連れ帰り70日間かくまったとして有名である。そんな縁もあって静岡県袋井市の名刹、可睡斎の直末寺となっている。龍門の梵鐘、見事な彫りの石仏「くるま六地蔵」などがある。
番   外 寂静山 西方寺(さいほうじ)
知多郡南知多町篠島照浜3 【宗派】浄土宗 【本尊】阿弥陀如来
京都知恩院の直末寺で永正13(1516)年に創建された。永正9(1512)年の伊勢神宮火災の際、神宮の鬼門に当たる篠島に「火度見善光寺如来(武田信玄作)」を祭り祈願すれば後世は難を逃れると、宮中から知恩院に命が下り、この寺が建立されたという。
第三十九番 金剛山 医徳院(いとくいん)
知多郡南知多町篠島照浜27 【宗派】真言宗豊山派 【本尊】薬師如来
漁港を見下ろす小高い山にある。医王寺の一院だったが、建暦2(1212)年に奥の院神宮寺として篠島に移転し、寛正3(1462)年、現在名に。本尊の薬師如来は別名「八十八長寿薬師」といい、祈願すれば米寿まで長生きできるという。平成20年には弘法大師修行像が建立された。