シリーズ  知多四国八十八ヵ所霊場 戻る

〜24.01.14掲載〜
●信仰、癒やし、憩いの場
「知多四国八十八カ所霊場」を紹介するシリーズの第4回。霊場の札所は一番から八十八番までのお寺と、開山所3カ寺・番外7カ寺を合わせて98カ寺あります。各寺院は八宗十一派という宗派の違いを超え、弘法大師(空海)への信仰という縁で結び合っています。知多四国の札所巡りは知多半島の東側に沿って南に向かい、半島先端の師崎から日間賀島・篠島へ渡り、再び半島の西側を北に上って大府市で満願成就となります。全行程はおよそ194キロメートル。今回紹介するのは第二十四番徳正寺から第二十九番正法寺までと、開山所の葦航寺と禅林堂、番外の影現寺と奥之院の合計10カ寺。知多四国霊場で祭る空海(774〜835)は平安時代の僧です。空海ゆかりの寺々を巡るのが四国の八十八カ所霊場。知多(愛知県)、小豆島(香川県)、篠栗(福岡県)の三霊場を「日本三大新四国霊場」といい、どの霊場も信仰の場、癒やしの場、憩いの場として毎年多くのお遍路さんが訪れています。特に知多は三方を風光明媚な海に囲まれた温暖な地で、人の心にも信仰にも穏やかさを育んできました。
第二十四番 慶亀山 徳正寺(とくしょうじ)
知多郡武豊町里中92 【宗派】曹洞宗 【本尊】大通智勝仏
本尊の左に奉安されている十一面観世音菩薩は天平時代の作で、重要文化財級といわれている。 境内には「お亀さん」の名で親しまれる延命無量慶亀尊天がある。当地の浜に打ち上げられた大亀を祭ったと伝えられている。地蔵堂の千体地蔵に安産・子授け祈願をする人が多い。周辺には古くからの味噌・たまりの醸造蔵が立ち並び、黒板塀と土蔵の風景が続く。
第二十五番 法輪山 円観寺(えんかんじ)
知多郡武豊町富貴郷北97 【宗派】天台宗山門派 【本尊】阿弥陀仏
中興十三世旭順法印はこの地方の寺子屋の開祖といわれ、境内にはその弟子たちによって建立された地蔵菩薩の石像がある。江戸時代に造られた総けやき造りの立派な護摩堂には秘仏、金毘羅大権現のほか、一木彫りの「弘吉布袋」や不動明王、薬師如来が祭られている。また、観音堂にはぼけ封じ観音が祭られている。
開山所 達磨山 葦航寺(いこうじ)
知多郡美浜町布土平井131 【宗派】曹洞宗 【本尊】釈迦牟尼仏
元亀元(1570)年、和叟玄光和尚によって開創された。知多四国の三開山の一人、武田安兵衛行者を祭っている。安兵衛行者は天明8(1788)年、讃岐国安原村(現香川県高松市)生まれ。36歳の時に知多半島を訪れ、霊場開発のために力を尽くした。本堂は平成20年に再建された。
番  外 慈雲山 影現寺(ようげんじ)
知多郡美浜町時志南平井86 【宗派】曹洞宗 【本尊】釈迦牟尼仏
128段の石段を登った高台にあり、知多四国随一の景勝を誇る。約1万平方bの広大な境内には高さ6b、重さ25トンもある1枚の御影石から造られた大観音像「時志観音」に目を見張る。尾張藩初代藩主徳川義直が領内一円を巡察した際、安産祈願をし、それが叶ったことから、時志観音は安産の観音として篤い信仰を集めるようになった。
第二十六番 龍華山 弥勒寺(みろくじ)
知多郡美浜町北方西側16 【宗派】曹洞宗 【本尊】弥勒菩薩
名鉄河和駅の北側の住宅地にある。山門は薬医門造り、棟に飾った鯱瓦が威勢よく跳ねている。本堂は明治40年に落慶、弘法堂は昭和3年に再建された。平成7年には本堂、開山堂、檀信徒会館などが全面的に整備された。春の彼岸には寺宝の「地獄絵図」と「涅槃絵図」が公開される。
第二十七番 天竜山 誓海寺(せいかいじ)
知多郡美浜町古布善切20―63 【宗派】曹洞宗 【本尊】釈迦牟尼仏
創建は弘治元(1555)年。かつては海岸近くにあったが、昭和19年に約100戸の集落ごと現在地へ移った。美浜町の丘陵地に建ち斜面を利用して庭園が広がっている。鐘楼門は風格が漂う。階上から垂れ下がる紐を引いて自由に鐘をつくことができる。愛染堂に祭られている愛染明王は縁結びにご利益があるといわれる。
開山所 天竜山 禅林堂(ぜんりんどう)
知多郡美浜町古布善切20―63 【宗派】曹洞宗 【本尊】釈迦牟尼仏
禅林堂は第二十七番誓海寺の境内、愛染堂の左隣にあり、知多四国霊場の三開山の一人、岡戸半蔵行者をお祭りしている。 半蔵行者は宝暦2(1752)年、知多郡福住村(現在の阿久比町)に生まれた。妻子に先立たれ、諸国遍歴の旅へ。弘法大師の遺徳を尊信し、自らの田畑屋敷を売り払った資金で「大師木像」を調えるなど霊場づくりに傾注した。
第二十八番 浄光山 永寿寺(えいじゅじ )
知多郡美浜町豊丘西側35 【宗派】西山浄土宗 【本尊】阿弥陀如来
山里の集落にひっそりと建つ。山門横の地蔵像を拝み、境内に入ると、本堂、大師堂が建つ。秘仏の薬師如来は行基菩薩の作と伝えられる。大師堂の左脇に建つ聖観音像は「ことぶき観音」といわれ、柔和なお顔をしている。平成6年に本堂を改修、同10年には境内が整えられた。
第二十九番 大悲山 正法寺(しょうぼうじ)
知多郡南知多町豊丘本郷 【宗派】天台宗 【本尊】毘沙門天
源義朝家臣の鎌田兵衛正清の居城跡に建つ。正清は野間(現美浜町)でしゅうとである長田忠致の謀略により義朝とともに殺された。多宝塔造りの本堂には行基菩薩の作と伝えられている毘沙門天と吉祥天の夫婦霊像が祭られています。高僧、法忍和尚の書にちなんで「千枚通し霊場」としても有名です。
番   外 岩屋山 奥之院(おくのいん)
知多郡南知多町山海城洲62―2 【宗派】尾張高野山宗 【本尊】聖観世音菩薩 
周囲を岩山に囲まれ、静寂、神秘的な霊気が漂う霊場である。朱色の三重塔が印象的で、背後の山の中腹には岩窟がある。弘法大師が大同3(808)年に開創。大師はここで100日の護摩修法をし、自分の像を岩窟に納めたことから「身代大師」の総本山として崇敬されている。